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宇宙シリーズ第12回:水星 — 灼熱と極寒が交差する太陽最接近の惑星

水星のデビュッシー・クレーター(MESSENGER撮影)
水星のデビュッシー・クレーター。NASAの水星探査機MESSENGERが取得した地表モザイク画像(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Carnegie Institution of Washington / Public Domain)
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1. 水星の基本データ

水星は太陽に最も近い 太陽系最内惑星。直径約4,880kmで地球の約3分の1という小ささながら、平均密度は地球並みに高く、巨大な鉄核を持つ「金属リッチ」な岩石惑星です。公転周期は約88日で惑星中最短。一方、自転は約59日と遅く、公転と自転が3:2で共鳴しているため、太陽日(同じ地点で次に太陽が昇るまで)は約176日に及びます。

大気はほとんど保持できず、酸素・ナトリウム・水素・ヘリウム・カリウムなどが微量に漂う薄いエクソスフィアがあるだけ。昼は表面温度が約430℃まで上昇し、夜は−180℃近くまで低下するという極端な寒暖差が特徴です。表面は月に似たクレーターだらけの景観で、巨大衝突が刻んだ「カロリス盆地」や、内部収縮で生じた長大な断崖(スカープ)が縦横に走ります。さらに、地球以外の地球型惑星としては珍しく固有の磁場を持ち、小規模ながら磁気圏も形成しています。

2. 探査の歴史(マリナー10号/MESSENGER/ベピコロンボ)

マリナー10号:水星初訪問と磁場の発見(1974–75)

人類が初めて水星に接近したのはNASAのマリナー10号。金星の重力アシストで水星へ到達し、1974〜75年にかけて3回のフライバイを実施。表面の約40〜45%を撮影してクレーターに覆われた地形を明らかにし、さらに水星が固有の磁場を持つことを発見しました。これにより水星の巨大鉄核と内部ダイナモの存在が強く示唆されます。

MESSENGER:初の周回機が水星の素顔を一新(2011–2015)

2機目の本格探査はNASAのMESSENGER。2011年に史上初の水星周回軌道投入に成功し、2015年の燃料枯渇まで4年以上連続観測を実施。表面のほぼ全域を高解像度でマッピングし、地質・化学組成・磁場・エクソスフィア・内部構造に関する膨大なデータをもたらしました。なかでも極域の永久影クレーターに水の氷が存在する確証を提示した成果は特筆すべき発見です。

ベピコロンボ:欧州・日本の連合探査、到着直前期へ

ベピコロンボ(BepiColombo)はESAとJAXAの共同計画。2018年打上げ後、地球・金星・水星の重力アシストと電気推進を組み合わせて巡航を継続しています。予定されていた2025年末の水星周回投入は、推進系の出力低下を受けた新軌道設計により2026年11月に延期。到着後はESAの周回機MPOと、JAXAの磁気圏観測機「みお(MMO)」が極軌道で協調観測し、地表・内部・磁気圏を総合的に解明する計画です。

3. 移住の可能性と宇宙開発上の意義

水星表面は強烈な日射・真空・極端温度差に加え、往還コスト(デルタV)も大きく、直接的な移住先としては最難関クラスです。一方で、科学・資源・インフラの観点から「活用可能性」の芽はあります。

  • 極域の水氷資源:MESSENGERは北極・南極の永久影に大量の水氷堆積を示す観測的証拠を提示。将来の無人拠点が水・酸素・燃料(電解水素)を現地調達できる可能性が広がりました。
  • 準常時日照の稜線:自転軸の傾きがごく小さいため、極冠の一部稜線は長時間にわたり日照が続く「準永続光」条件が成立。永久影の近傍に太陽光発電+遮蔽された居住区を組み合わせる配置は、エネルギー確保と温度安定の両面で合理的です。
  • 太陽観測の前線基地:太陽に近い水星圏は、フレアやCME監視の早期検知拠点として有望。水星周回・表面・ラグランジュ点などに配置する観測網は、宇宙天気予報の高度化に寄与し得ます。
  • 高日射を活かす製造・送電:赤道低緯度では入射日射が地球の数倍。大規模PVと真空環境を活かした製造・精錬、軌道上インフラへのエネルギー供給など、長期ビジョンとして議論されています。

総じて水星は、「住む」よりもまず科学とインフラ検証の最前線として価値が高い天体です。ベピコロンボ期の知見が蓄積されれば、極域拠点・資源回収・宇宙天気観測の実現可能性評価が進むでしょう。


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