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宇宙シリーズ 第13回:金星 — 極限の環境と探査の歴史、移住への挑戦

※金星の地表。ソ連の金星探査機ベネラ13号が1982年に撮影したカラー画像。厚い雲を通した日光で空は黄金色に染まる。

目次

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1. 金星の基本情報(地形・気候・大気)

金星は地球のすぐ内側を公転する太陽系第2惑星で、大きさや質量が地球に近いため「地球の双子星」とも呼ばれます。しかし、その環境は地球とは似ても似つかない過酷さです。大気の主成分は二酸化炭素で、表面の平均気温は約460℃、気圧は地球の90倍(約90気圧)にも達します。濃厚な二酸化炭素による温室効果で太陽系でも最も高温な惑星となっており、鉛も溶けるほどの灼熱地獄です。また厚い雲が常に空を覆い、その雲の主成分は濃硫酸でできています。

金星の一日は243日と非常に長く(自転が遅い上に逆向き)、上空の大気は自転の約60倍もの速さで東向きに吹き荒れる「スーパーローテーション」という現象も起きています。地表は溶岩平原と巨大火山地形が広がり、直径200km級の火山マアト・モンスなども存在します。最新の研究では、金星で現在も火山活動が起きている可能性が高いとされています。

2. 金星探査の歴史と最新ミッション(VERITAS、EnVision、あかつき)

1960~80年代にはソ連のベネラ計画が世界初の金星着陸と地表撮影に成功し、NASAのマリナーやパイオニア・ビーナス計画が続きました。1990年代のマゼラン探査機は金星表面の98%をレーダーでマッピングし、その後ESA(欧州宇宙機関)の「ビーナス・エクスプレス」(2006~2014年)が長期観測を実施しました。

日本の「あかつき」(PLANET-C)は2010年打ち上げ、2015年末に金星周回軌道へ。太陽系最大級の大気波「弓状の雲」を初観測し、スーパーローテーションの解明に貢献しました。2024年に通信途絶しましたが、8年以上の成果を残しました。

NASAのVERITASは2021年採択の金星再探査ミッションで、30年ぶりの米探査機です。レーダー観測で地形・重力場を高精度に解析し、金星の火山活動や地殻運動を調べます。打ち上げは当初の2027年から2031年に延期されています。

ESAのEnVisionは2030年代初頭に打ち上げ予定の金星周回探査機です。地質活動と大気の相互作用を詳細に調べ、「なぜ地球と金星がこれほど違う進化を遂げたのか」を探ります。VERITASと並行して観測することで、金星の地質・気候史が大きく解明されると期待されています。

3. 金星への移住は可能か?最新の科学知見

金星表面は摂氏460度・90気圧・濃硫酸の雲と、有機生命には過酷すぎます。しかし高度50km付近では気温約30~70℃・圧力1気圧前後と、地球環境に近い条件が存在します。ここに浮かぶ有人飛行船型基地を構想したのがNASAのHAVOC計画です。大気の厚みが放射線を遮蔽し、地球並みの重力環境で生活できる可能性があります。

さらに2020年、イギリスの研究チームが金星大気中にホスフィン(リン化水素)を検出したと発表しました。これは地球では微生物が産生するガスで、生命活動の痕跡ではないかと注目されました。後に反論も出ましたが、金星雲中に生命が存在する可能性を示唆する発見でした。

金星は灼熱の惑星である一方、上空には生命・移住の可能性が眠っているのかもしれません。今後の探査でその真相が明らかになることを期待したいところです。

おわりに

金星探査は今、再び熱を帯びています。VERITASとEnVisionが稼働すれば、金星の内部から大気までを網羅した“真実”が明らかになるでしょう。人類が金星に都市を浮かべ、金星の雲の上から太陽を眺める日も、決して夢ではないかもしれません。

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