目次
1. 火星の基本情報
火星は太陽系の第4惑星で、地球のすぐ外側を公転しています。直径は約6,800km、質量は地球の約10分の1。表面重力は0.38Gと地球の3分の1です。1日の長さは約24時間37分(火星日=ソル)、季節の変化もあるため、太陽系の中でも地球に最も似た惑星とされています。
大気は二酸化炭素が95%、気圧は地球の約0.6%。平均気温は-60℃前後で、昼は20℃、夜は-100℃以下にもなります。空気中の酸化鉄の粒子が太陽光を反射し、空を赤く染めることから「赤い惑星」と呼ばれます。火星にはオリンポス山(標高27km)やマリネリス峡谷(深さ7km)など、太陽系最大級の地形が存在します。
北極・南極には氷の帽子「極冠」があり、水とドライアイス(二酸化炭素の氷)が季節によって広がったり縮んだりします。さらに、地下には大量の氷が眠っており、液体の塩水が存在する可能性も報告されています。火星には2つの小さな衛星フォボスとダイモスがあり、いずれも捕獲された小惑星と考えられています。
2. 火星探査機とミッションの歴史
バイキング時代から現在へ
1976年、NASAの「バイキング1号・2号」が人類初の火星軟着陸に成功。地表の写真を送信し、土壌分析・生命探査実験を行いました。結果は生物の存在を示すものではありませんでしたが、化学反応を起こす独特な土壌が確認されました。
1997年、「マーズ・パスファインダー」と小型ローバー「ソジャーナ」が着陸。移動型ロボットによる調査を実証し、以後の探査車の礎となりました。2004年には「スピリット」と「オポチュニティ」が着陸。両ローバーは水の痕跡を多数発見し、オポチュニティは14年間・約45kmを走破しました。
キュリオシティ・インサイト・パーサヴィアランス
2012年に着陸した「キュリオシティ」は現在も活動中。ゲールクレーターでかつて湖が存在した証拠を発見し、有機物や粘土鉱物を検出しました。火星がかつて生命に適した環境を持っていた可能性を強く示唆しています。
2018年の着陸機「インサイト」は火星の内部構造を調査し、450回以上の「火震」を観測。これにより火星の地殻や核の大きさが推定されました。2021年の「パーサヴィアランス」は古代生命の痕跡を探すとともに、岩石コアを採取し、将来のサンプルリターン(地球持ち帰り)計画の基礎を築いています。
搭載された小型ヘリコプター「インジェニュイティ」は人類初の他惑星での動力飛行に成功。予定5回を超え、最終的に70回以上の飛行を記録し、空中探査の新時代を切り開きました。
3. 火星移住の可能性と計画
火星は太陽系で最も移住に適した惑星と考えられています。1日の長さや重力が地球に近く、水資源も存在するためです。しかし、大気の薄さ・放射線・寒冷など課題は多く、人類が住むには高度な技術が必要です。
NASAは月面拠点アルテミス計画を経て、2030年代に有人火星探査を目指しています。一方、スペースXのイーロン・マスク氏は「2050年までに100万人都市を火星に建設する」と宣言。超大型宇宙船「スターシップ」により100人単位で火星へ輸送する構想を掲げています。
また、火星の二酸化炭素から酸素を作る装置「MOXIE」の実験も成功。水氷を利用した飲料水・燃料生産、火星土壌での農業、地下居住なども研究されています。放射線を防ぐための3Dプリンタ建築やドーム都市構想も進行中です。
移住実現には時間を要しますが、火星はもはや「夢」ではなく現実的な次のフロンティア。数十年後には、赤い空の下で人類が暮らし、夜空に青い地球を見上げる日が訪れるかもしれません。

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