MENU

宇宙シリーズ|いっかくじゅう座とは?オリオン座のそばに潜む冬の天の川の宝庫

冬の夜空で圧倒的な存在感を放つのはオリオン座とおおいぬ座シリウスですが、そのあいだにひっそりと横たわる星座があります。それが、ラテン語名 Monoceros(モノケロス)、日本語では「いっかくじゅう座」と呼ばれる星座です。

いっかくじゅう座は、明るい星こそありませんが、冬の天の川の中に位置し、バラ星雲やクリスマスツリー星団・コーン星雲など、魅力的な星雲・星団が数多く集まる「ディープスカイの宝庫」です。

この記事では、一般の宇宙好きの方向けに、

  • いっかくじゅう座という星座の基本情報
  • 日本からの見え方・探し方
  • バラ星雲・クリスマスツリー星団など代表的な天体
  • 「一角獣」の神話的イメージとの関係
  • 観察・星空撮影のポイント

を、やさしく整理して解説します。

目次

目次

  • 1. 結論(要点)
  • 2. いっかくじゅう座ってどんな星座?
  • 3. いっかくじゅう座はいつ・どこで見える?
  • 4. いっかくじゅう座の代表的な天体(バラ星雲・クリスマスツリー星団 など)
  • 5. 一角獣の神話・物語とのつながり
  • 6. 観察・撮影のコツ
  • 7. まとめ
  • 8. 関連記事(宇宙シリーズ)
  • 9. 出典・参考リンク

1. 結論(要点)

  • いっかくじゅう座は、オリオン座・こいぬ座・おおいぬ座・ふたご座・うさぎ座・ポンプ座などに囲まれた、天の赤道上の淡い星座です。明るい星はありませんが、冬の天の川の中に位置しているため、星雲・星団の密度が高い領域です。
  • 星座の名前 Monoceros は「一角獣(ユニコーン)」を意味し、17 世紀にオランダの地図製作者ペトルス・プランキウスが導入した比較的新しい星座です。
  • 日本からは冬〜早春(おおよそ 12〜3 月)の夜に南〜南東の空で見やすく、特に 1〜2 月の深夜には天頂付近まで昇って観察しやすくなります。
  • いっかくじゅう座には、バラ星雲(ロゼッタ星雲)、クリスマスツリー星団とコーン星雲(NGC 2264)、モノセロス・ループ(超新星残骸)など、撮影対象として人気の高い天体が集中しています。
  • 肉眼で星座の形をとらえるのは難しいものの、双眼鏡や小型望遠鏡があれば「冬の天の川の奥行き」を実感できるエリアです。

2. いっかくじゅう座ってどんな星座?

いっかくじゅう座は、国際天文学連合(IAU)が定める 88 星座のひとつで、略号は Mon(モン)、属格は Monocerotis(モノケロティス)です。名称はギリシア語の「モノケロース(一角)」に由来し、「ユニコーン」のイメージで描かれます。

主な天文学的なスペックは次のとおりです。

  • 位置:天の赤道付近(赤経 6〜8 時、赤緯 −10〜+10 度付近)
  • 面積:約 482 平方度(全天で 35 番目の広さ)
  • 明るい星:3 等星クラスの β(ベータ)いっかくじゅう座星が最も明るいが、それでも 3.7 等級程度で、目立つ一等星はありません。
  • 隣接星座:オリオン座、ふたご座、こいぬ座、おおいぬ座、うさぎ座、ポンプ座、からす座 などに囲まれています。

このように、いっかくじゅう座は星座としての「輪郭」を肉眼でたどるのが難しい星座です。その一方で、星座の内部にはバラ星雲やクリスマスツリー星団など有名な星雲・星団が多数含まれ、双眼鏡・望遠鏡向けには非常に楽しみが多いエリアになっています。

歴史的には、古代ギリシアやアラビアの天文学には登場せず、16〜17 世紀ごろの星図で初めて現れた「近代の星座」です。中世ヨーロッパで人気だったユニコーン像を夜空に投影したものと考えられています。

3. いっかくじゅう座はいつ・どこで見える?

3-1. 見える季節と時間帯

いっかくじゅう座は天の赤道付近にあるため、北半球・南半球のどちらからもよく見える星座です。日本(北緯 30〜45 度)からの「見ごろ」は次のようになります。

  • 見ごろの季節:12〜3 月(特に 1〜2 月がベスト)
  • 見やすい時間帯:1〜2 月の 21〜24 時ごろ(季節が早いほど深夜寄り)
  • 方角:南〜南東〜南西方向のやや高い空

冬の代表的な一等星であるベテルギウス(オリオン座)、リゲル(オリオン座)、シリウス(おおいぬ座)、プロキオン(こいぬ座)を結んだ「冬のダイヤモンド」「冬の大三角」の内側に、いっかくじゅう座が位置します。明るい星座に囲まれている一方で、自身の星は暗いため、「形は見えにくいけれど、そのエリア一帯がいっかくじゅう座」というイメージでとらえると分かりやすくなります。

3-2. 探し方のコツ

肉眼で星座線を想像するのは難しいため、次のステップで「領域」をつかむのがおすすめです。

  1. まず、冬の夜空で最も明るいシリウス(おおいぬ座)を見つける。
  2. シリウスから北(左上)方向に目を動かし、オリオン座のリゲル、さらにベテルギウスへとたどる。
  3. ベテルギウスからこいぬ座のプロキオンへ目を移すと、その大きな三角形の内部付近が、おおよそいっかくじゅう座のエリアです。

星座アプリや星図を使うと、おおよその領域がすぐに分かります。そのうえで双眼鏡や望遠鏡を向けると、「どこからどこまでが星座なのか」を気にせずに、星雲・星団の観察に集中できます。

4. いっかくじゅう座の代表的な天体(バラ星雲・クリスマスツリー星団 など)

いっかくじゅう座が「ディープスカイの宝庫」と呼ばれる最大の理由は、その内部に有名な星雲・星団が集まっていることです。代表的なものをいくつか紹介します。

4-1. バラ星雲(ロゼッタ星雲:Rosette Nebula)

バラ星雲は、地球から約 5,000 光年の距離にある巨大な散光星雲で、写真では赤い花びらのような形が印象的です。中心部には散開星団 NGC 2244 が存在し、その若く高温な星々の放射が、周囲のガスを照らし出しています。

双眼鏡では淡い「もや」としてしか見えませんが、広角レンズで長時間露光すると、冬の天の川の中に浮かぶ巨大な宇宙の花として写し取ることができます。

4-2. クリスマスツリー星団とコーン星雲(NGC 2264)

NGC 2264 は、「クリスマスツリー星団」と「コーン星雲」を含む大きな星形成領域の総称です。地球からの距離はおよそ 2,500 光年とされ、若い星々が密集する散開星団と、その周囲を取り巻くガス・塵の雲が複雑な模様を形作っています。

写真では、星々がクリスマスツリーのような三角形に並び、その根元に暗黒星雲の「コーン」が突き出している姿から、この名前が付けられました。赤外線や X 線の観測からは、多数の若い星が誕生していることが確認されており、星形成の研究対象としても重要な領域です。

4-3. 散開星団 M50 ほか

いっかくじゅう座には、メシエ天体のひとつである散開星団 M50 も含まれます。双眼鏡でも比較的見つけやすく、晴れた夜には「星の集まり」としてにぎやかな様子を楽しめます。

そのほか、モノセロス・ループと呼ばれる超新星残骸や、変光星 V838 Monocerotis の光エコーなど、専門的な観測対象としても注目される天体が多数存在します。

5. 一角獣の神話・物語とのつながり

いっかくじゅう座は、古代神話に由来する多くの星座と違い、「近代に追加された星座」です。そのため、ギリシア神話に直接対応するストーリーはありませんが、ヨーロッパ中世以降に広まった「一角獣(ユニコーン)」のイメージを夜空に投影したものと考えられています。

一角獣は、額から伸びる一本の角を持つ白い馬のような姿で描かれ、純潔・高貴さ・神秘性の象徴として扱われてきました。いっかくじゅう座も、オリオン座やおおいぬ座といった「力強い」星座に囲まれながら、その内側で静かに輝く星座として、どこか神秘的な印象を与えます。

6. 観察・撮影のコツ

6-1. 観察のポイント

いっかくじゅう座の星自体は暗いため、肉眼で形を追うのではなく、「冬の天の川の中にある星雲・星団を探す」というスタンスが現実的です。

  • 街明かりから離れた暗い場所を選ぶ(冬場の山間部・海岸など)。
  • 冬の大三角(ベテルギウス・シリウス・プロキオン)を基準に、内側の天の川に双眼鏡を向ける。
  • 星図アプリでバラ星雲や NGC 2264 などの位置を確認しながら、視野を少しずつ動かして探す。

6-2. 写真撮影の基本設定(入門者向け)

一眼レフ・ミラーレスカメラと三脚があれば、いっかくじゅう座周辺の天の川やバラ星雲を写すことができます。

  • レンズ:広角〜中望遠(20〜85mm)
  • 絞り:F2.8〜F4 くらいまでなるべく開ける
  • シャッター速度:10〜30 秒(焦点距離に応じて、星が流れない範囲で調整)
  • ISO:1600〜6400 を目安に、ノイズと明るさのバランスを見ながら調整

バラ星雲や NG C2264 のような Hα 領域を強調したい場合は、Hα に感度の高いカメラ(改造機)やナローバンドフィルターを使うと、赤い星雲がよりはっきり写ります。ただし、まずは通常の機材で「冬の天の川の中に淡く浮かぶ星雲」をねらい、構図や追尾の練習をするのがおすすめです。

7. まとめ

  • いっかくじゅう座は、オリオン座やシリウスに囲まれた「冬の天の川の中にある淡い星座」で、肉眼では目立たないものの、星雲・星団が非常に豊富な領域です。
  • バラ星雲、クリスマスツリー星団とコーン星雲、散開星団 M50 など、双眼鏡・望遠鏡・写真撮影のいずれでも楽しめる天体が集まっています。
  • 名前の由来である「一角獣(ユニコーン)」のイメージどおり、派手さはないものの、じっくり向き合うほどに奥深い魅力を持った星座です。
  • 冬の大三角の内側にある「静かなエリア」として、次の観測・撮影のターゲットにぜひ加えてみてください。

8. 関連記事(宇宙シリーズ)

9. 出典・参考リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次